最近(2016年9月23日)、大手広告代理店電通が、インターネット広告で、虚偽報告など不正な取引があったことを認めたという事件がありました。

インターネット広告の闇とか書いている人がいますが、インターネット広告に闇なんてあるんでしょうか?単に企業の人がインターネット広告に無知なだけでないのでしょうか。日本では、企業が広告を掲載する時には、ネットメディアと直接取引をあまりせずに、電通など広告代理店が双方の中間に立って取引をしまうため、インターネット広告のことを知らなさすぎなだけではないでしょうか。

広告掲載のチェックについて

インターネット広告には、大きく分けてクリック課金タイプ、インプレッション課金タイプ、成果報酬タイプがあります。

成果報酬タイプは、実際に購入や契約など成果が合ったときに課金が発生するタイプです。これは誤魔化しようがありませんが、トヨタのように実店舗で購入する商品の場合は無理で、EC サイトを運営する企業向きです。

インプレッション課金タイプは、Webサイトの広告枠にバナーを掲載しますというようなもので、表示回数に応じて料金を支払います。

電通の不正があったのは、「運用型広告」と呼ばれるもので、その代表的なものが Google AdWords です。ウェブサイトやキーワード、トピック、ユーザー層を指定して、広告を表示させることができます。料金はクリック課金とインプレッション課金を選択できますが、クリック課金タイプの方が8割ぐらいを占めます。クリック課金の場合は、広告がクリックされると料金が発生します。

確認の方法ですが、管理画面を見れば簡単にわかりますが、広告代理店は管理画面を見せようとしない場合が多いと思います。でも、Google AdWords を使うのであれば、Google Analytics に Google AdWords のアカウントをリンクさせましょう。すごく便利です。

AdWordのアカウントのリンクの画像

なぜ、Google AdWords が使われているのか?細かい分析が容易にできるからです。インターネット広告に闇があるなんてうそです。

Google AdWords 以外の運用型広告でも、Google Analytics を使えば、Google AdWords を使うほどは細かな分析はできなくても、広告掲載のチェックぐらいはできます。

なぜ不正がおこるのか

なぜ不正がおこるのかの前に、Google AdWords に広告を出すのは自分でもできます。なぜ、それを広告代理店に出すのでしょうか。電通の社員は、大ヒットをする広告を作りたくて入社しているわけで、インターネット広告のような手間のかかる作業をしたいとは思わないでしょう。それは、クライアント企業の広告担当者も同じだと思います。

自分が Google Adsense をしていて、気づいたことの一つが、下の図をみてください、3月はクリック単価が高くて、それも下旬になるほど高くなるということです。(注: 下の図はクリック単価ではなくて、RPM(表示回数 1,000 回あたりの見積もり収益額)ですが、クリック単価の影響が大きいです。)

AdWordのアカウントのリンクの画像

日本では、3月末が決算なので、予算を使い切りたいか売り上げのノルマを達成したためではないでしょうか。3月に売り上げが増加するのならば理解できるのですが、そうとは思えないので、高い単価で広告を出すのは企業にとっては明らかに損をする行為です。それでもしてしまうのが広告マンです。

テレビや新聞の広告であれば、枠で料金が決まっているので予算の使い切りは簡単だし効果の説明も楽です。しかし、「運用型広告」では、クリック単価を決めて入札をする必要があり、相手のある話なので、自分の思い通りにはなりません。相手より単価が低ければ、広告が表示されないので予算が消化できません。広告の期間中はまんべんなく広告を表示したいと思ってもそれほど簡単なことではありません。

しかし、発注側の広告マンとしては格好をつけたいでしょう。広告代理店から細かい資料をもらうと説明が面倒なので、わかっていても単純な資料しか要求しないということもあるのでしょう。

雇用の流動性が必要

Google は、ソフトウェア開発者の会社です。Google AdWords にも Google Analytics にも API があります。コントロールパネルでちまちまと作業をしなくても、プログラムを書いて作業を自動化することができます。

また、インターネット広告からホームページに流入した見込み客が顧客になってくれるようなホームページを作成する必要があります。

こういう仕事を従来の広告マンに要求しても無理です。それよりも IT 系のエンジニアやデザイナーが向いている仕事です。例えば、マイクロソフトのエバンジェリストになったちょまどさんなんかは最適だと思います。彼女は、漫画家兼プログラマーです。

日本の場合は、企業の方は新卒一括採用で個性のある人をあまり雇用しようとしないし、エンジニアやデザイナーの方も新しいことをやりたがらない人が多いように思います。日本の IT 業界の従事者の待遇が世界で最低だという理由はこういう所にあるんだろうと思っています。

インターネット広告の分野でも、まだまだやれることはたくさん残されているので、チャレンジしてみたらいいと思います。