Internet Watch の 「KDDIウェブコミュニケーションズのクラウド戦略」という記事をみて気づいた点があったのでメモしました。インタビュアーの「Amazon EC2などのような従量課金サービスは」という質問に、「最初はやる方向で検討していたのですが、「クラウド破産」という言葉もあるように、使いすぎることを心配するネガティブな反応が顧客企業側で強く、やる必要があるのか疑問に思っています。」 という回答です。実際に計算してみればクラウドで破産なんかするわけないことぐらい直ぐにわかるのに、心配してネガティブになる日本の企業はどうなっているんだと思ってしまいました。Amazon EC2 の課金で管理者がコントロールしずらいのは、ユーザーからのアクセスに応じて課金される部分で、具体的に言うと、データ転送量、EBS(簡単にいえば外付け仮想ディスク)へのI/O リクエスト、ロードバランサーのテータ処理量、CloudFront(グローバルなコンテンツ配信サービス)の転送量等です。しかし、いずれも単価は安く、データ転送量で言えば、1GB で 0.201$ だから、1TB で 1万6千円ぐらいです。自分が運用しているサイトだと、1ページビューで転送量の平均が100KB程度なので、1TB の転送量があれば、約1千万ページビューのサービスが提供できます。1千万ページビューがあれば、1万6千円の経費に何の問題もないと思うのですが…。

そこで KDDI Web Communication の CloudCore VPS でデータ転送量の取り扱いがどうなっているか調べてみました。よくある質問に「転送量に制限はありますか?」というのがあり、それへの回答は「データ転送量による課金はありませんが、ネットワークやサーバーに対して過大な負荷がかかるご利用の場合にはご相談させていただく場合がございます。また、緊急を要する場合、データ転送の帯域を制限させていただく場合がございます。制限をかけた場合は、サーバーのご契約者様へ連絡させていただきますのでご了承ください。」となっています。転送量が多くなると追い出されるということのようですが、どの程度の転送量まで許されるのか過大な負荷が明確になっていないというのは問題だと思います。結局のところ、AWS だと管理ができなければ過大な請求がくる場合がないとはいえないけど、CloudCore VPS だと金を請求せずにサーバーを止めてくれるということのようです。自分の感覚ならサーバーを勝手に止められるのは困るから金を払うと言うと思います。

これに関連して思い浮かべたのが、IE6の問題です。このサイトでも IE6 のシェアが 7% あります。IE6からのアクセスは、土曜、日曜、祝日にアクセスが極端に少なくなるという特徴があることから、IE6を依然として使っているのは個人ではなく、企業にあると考えられます。ログをみると有名な企業からのアクセスもあります。そういう企業では、社内システムが IE6  にしか対応していないので、それ以外のブラウザーのインストールを禁止していると思われます。しかし、少し考えれば IE6 にしか対応しないレガシーにシステムがあっても、そのシステムにアクセスする場合だけ IE6 を使って、他のシステムやインターネットでは Chrome や Firefox を使えばいいと思うけど、それさえ禁止しているのでしょうか。The Internet Explorer 6 Countdown のページによると、日本のIE6 のシェアは5.9%で、中国、韓国に次いで世界で3番目です。一方、ヨーロッパや北米では1%程度まで減少しています。

これらの点からみると、日本では「クラウド破産」というようなイメージだけで判断し、長期的な視野に立った投資ができていないという企業が多いという問題点が浮かんできます。