これは Google Cloud Platform(2) Advent Calendar 2016 の19日目の記事です。
今年の11月に「Mirai」ボットネットが、Twitterなどの利用するDNSサービスへDDoS攻撃をしてサービスをダウンさせた事件があって、IoT ボットネットが話題になっています。先日、その IoT ボットネットから自分のWebサイトにもアクセスがありました。もちろん IoT ボットネットからという確証はありませんが、早朝から深夜までアクセスがあったので、常時電源の入っている機器には間違いありません。それだと普通のPCではないし、IP アドレスを調べるとモバイル回線からのアクセスはないのでスマートフォンでもなさそうです。
攻撃者は遊び程度だったようで、50台ぐらいのボットネットで、アクセスの間隔もかなり開いていました。それでもサーバーの CPU 負荷が普段より数倍になったので気がつきました。自分のWebサイトは時々スパイクアクセスがあるので、サーバーにかなり余裕をもたせていたので、今回は無事でした。
でも、もう少し攻撃が激しければ、システムがダウンしたと思います。そういうことを考えれば、サーバーはできるだけ増強したいのですが、その分サーバー料金がかさむのが痛いところです。
スパイクアクセスの場合は、同じページにアクセスが集中するので出力キャッシュが効果的なのですが、DDoS攻撃の場合はどういう攻撃されるか分からないので、現状だと、データベースの部分が弱いので、その能力のアップを急ごうと思っています。
現在、AWS を使っているので、DynamoDB だったら短時間でスループットを上げられるのかと調べてみると、よくある質問に以下のような回答がありました。スループットを増やすのに数分以上かかるようで、それだったらシステムはダウンしてしまいます。
Q: テーブルのプロビジョニングされたスループットレベルを変更するにはどのくらい時間がかかりますか?
通常、スループットを減らす場合は数秒から数分、増やす場合は数分から数時間かかります。
追加スループットが必要になった時点でスループットを増加したり増加のスケジュールを立てたりすることはお勧めできません。スループット容量のプロビジョニングは、必要なときに確実に容量を確保できるようかなり前から行っておくことをお勧めします。
それで Google Cloud Platform を調べたら、さすがに Google です。Cloud Datastore は、完全に自動スケールで、何も考える必要はありません。料金は以下のように完全に使っただけの料金になります。(以下東京リージョンの料金です)
- データの保存 $0.18 GB/月
- エンティティの読み込み数 $0.06 /10万エンティティ
- エンティティの書き込み数 $0.18 /10万エンティティ
- エンティティの削除数 $0.02 /10 万エンティティ
一方、AWS の DynamoDB の料金は以下のようになっています。
書き込みスループット: $0.00742 :10 ユニットの書き込み容量あたり/1 時間 (1 時間あたり最大 36,000 回の書き込みを実行するために十分な容量)
読み込みスループット: $0.00742 : 50 ユニットの読み込み容量あたり/1 時間 (1 時間あたり最大 180,000 回の強力な整合性のある読み込み、または最大 360,000 回の結果整合性のある読み込みを実行するために十分な容量)
こちらは、スループットで料金が決まります。この料金の記載だと、結果整合性のある読み込みだと、50ユニットの設定で、月2億5千万回のアクセスができ $5.34 で済みます。Google Cloud Datastore だったら $155 もかかると言いたいのでしょう。さすがに Amazon は商売上手です。
でも、公開用 Web サーバーの場合は、スパイクアクセスやDDoS攻撃のことを考えるとそんな単純な話ではありません。
価格を比較するため、公開用 Web サーバーで月1千万PVのWebサイトがあるとします。月1千万PVあれば Webサービスだとかなり楽に経営ができます。
Cloud Datastore の料金は、1pv に必要なデータベースへのリクエストを1エンティティとすると、料金は月 $6 になります。仮に 1pv当たり平均 10 エンティティが必要だとしても、月 $60 です。安い言い切るのは難しいかもしれませんがリーズナブルな料金です。
DynamoDB の場合は、容量をあらかじめ確保しておく必要があります。スパイクアクセスやDDos攻撃を考えると予測不可能で必要な容量の計算なんかできないですね。取りあえず1秒間に100pvのアクセスということにして、1pv で必要なデータベースへのアクセスが1ユニットだとすると、50ユニットが必要で月$5.34です。Cloud Datastore とほぼ同じ金額になります。
でも、ここでよく考えてみてください。DynamoDB は、全体のスループットではなくて、テーブル毎にスループットを設定する必要があります。ローカルセカンダリインデックスは、5個まででかつテーブルの作成のときに定義してやる必要がありそれ以降の変更はできないので、一つのテーブルに各種のデータを詰め込むのは無理で、それなりの数のテーブルが必要になると思います。DDos攻撃はどこが狙われるか分からないので、1秒間に100pvのアクセスに耐えるようにしようと思えば、すべてのテーブルにそにアクセスに耐えるだけのユニットを割り当てる必要があります。そしてさらに最悪なのが、1pv 当たりに必要なデータベースへのアクセスが平均では2ユニットであっても、あるページで50ユニット必要であれば、そのページが狙われるとダメなので、そのテーブルには50×50=2500ユニットも割り当てる必要がありそれだけで月$267になってしまいます。
1秒間に100pvというのは、どの程度かというと、今回のボットネットからの自分のサイトへのアクセスは、1台で1秒に15回以上のアクセスがありました。10台あれば150pvになるので100pvの容量だとエラーが多発するようになります。1秒間に100pvというのは、DDoS攻撃対策では、殆ど話にならないレベルです。
こう考えていくと、DynamoDB は、DDoS対策としては最悪でした。そして、通常の利用においても DynamoDB ファーストにするとテーブル数が多くなってコストが嵩みます。このことは、AWS もよく理解しているようで、Amazon AWSでユーザ数1100万以上にスケーリングするためのビギナーズ・ガイド という記事から引用します。
NoSQL データベースではなく、最初はSQLデータベースを使用しましょう。
まずはSQLデータベースの使用を推奨します。技術は確立されています。
既存のコードやコミュニティ、サポートグループ、書籍やツールが多く存在します。
最初の1000万ユーザでSQLデータベースが破壊されることはありません。(データベースが大規模でない限り)壊れることはないでしょう。
スケーラビリティの明確なパターンがあります。
NoSQL データベースが必要になるのはいつなのでしょうか。
5TB以上のデータを初年に格納する必要がある場合や信じられないほどのデータベース集中型のワークロードの場合。
アプリケーションの要件が超低遅延である場合。
高いスループットが必要な場合。読み込みや書き込みの際の出入力にかなり手を加える必要があります。
リレーショナルデータがない場合。
要するに DynamoDB は、アプリケーションを高速化するために、ごく少数のテーブルに対して使うべきもののようです。この影響で、業務系の人を中心に、NoSQL ファーストはダメだと思っている人が多いと思いますが、AWS の事情であって、本来はどちらがいいというものではなくて、アプリケーションの性格によって使うべきものです。
クラウドも AWS、Azure、Google Cloud のどれがいいのかという一般的な答えはないと思います。しかし、システムダウンしないWebサーバーにしようと思ったら、Cloud Datastore は殆どコストなしで無制限にスケールできるので Google Cloud を使った方がはるかにいいと思います。Google Cloud のアクセス集中に対する強さは、今年 Pokémon GO で実証されています。一方、AWS で、SQLデータベースをメインに使った場合、エンタープライズ向けの閉じたシステムだと、アクセス数はそれなりの精度で想定できるので問題はあまり生じないと思いますが、公開 Web サーバーで、DDoS攻撃 のことまで考えると非常に難しい問題になります。SQLデータベースではスケールさせるのにコストが非常に高くなるし、急激なアクセス増への対応も簡単ではないと思います。この点は、Azure も同じだと思います。
自分の Web サイトは、できれば DDoS攻撃に強いものにしていきたいので、サーバーを AWS から Google Cloud Platform に移そうと思っています。でも、Amazon EC2 のリザーブドインスタンスを買っているので、その期間が終了するまでは待ちます。リザーブドインスタンスは料金の割引は大きいのですが制約は厳しいと思います。google Compute Engine の方は、1ヶ月単位で自動的に継続割引が適用されます。何もしなくてもいいのには気に入りました。(計算してみたら AWSは3年の標準リザーブドインスタンスだとAmazon EC2 の料金が安いですが、3年縛りは厳しいし、値下げが適用されないのでリスクが高いです。コンバーティブルリザーブドインスタンスにすると google Compute Engine の継続割引後の料金とほぼ同じです。)