日本標準職業分類での話ですが、システム・エンジニア、プログラマーという職業がなくなっています。平成21年12月に改訂される以前の日本標準職業分類(平成12年12月改定)では、情報処理技術者は、061 システム・エンジニア、062 プログラマー の二つに分類されていました。その職業の説明は次のようになっていました。
システム・エンジニア
電子計算機による情報の整理・加工・蓄積・検索等に関する機械化された業務システムの分析・設計及びプログラムの設計についての技術的な仕事に従事するものをいう。
プログラマー
システム設計書に基づいて、各種プログラム及びコンピュータ処理に必要な操作手引書等を作成するものをいう。
この分類は、IBMが主導していたメインフレームの時代の産物です。日本では今でもシステム・エンジニア、プログラマーという職種に分けて仕事をいる会社も多いようですが、世界的にみれば一人で設計もプログラムもするのが常識です。
やっと平成21年12月に改訂されていて、情報処理・通信技術者は、以下のように分類されるようになっています(詳細は総務省政策統括官(統計基準担当)日本標準職業分類(平成21年12月統計基準設定))。
- 101システムコンサルタント
- 102 システム設計者
- 103 情報処理プロジェクトマネージャ
- 104 ソフトウェア作成者
- 105 システム運用管理
- 106 通信ネットワーク技術者
- 109 その他の情報処理・通信技術者
そのうちシステム設計者とソフトウェア作成者について、説明と内容例示を抜粋すると以下のようになる。
システム設計者
顧客又は自己の問題の解決のため、ハードウェア、ソフトウェア双方を含め、主として必要なシステム全体の構成を企画する仕事に従事するものをいう。パッケージソフトウェアの開発企画、企業等でシステムの導入に関する企画や導入時の監督の仕事に従事するものも含まれる。ただし、個々のソフトウェアの開発の仕事に従事するものは小分類〔103〕に分類される。
○システムアーキテクト;システムアナリスト;情報処理アーキテクト;ISアーキテクト
×情報処理プロジェクトマネージャ〔103〕;プログラマー〔104〕ソフトウェア作成者
ソフトウェア作成(基本ソフトウェア及びアプリケーションソフトウェア双方の開発を含む。)のための仕様決定、設計及びプログラミングの仕事に従事するものをいう。ただし、主としてシステム全体の構成を企画する仕事に従事するものは小分類〔102〕に分類される。
○テクニカルスペシャリスト;プログラマー;ゲームプログラマー;CGプログラマー;社内システムエンジニア;クリエータ(情報通信産業に関するもの)
×システムアーキテクト〔102〕;情報処理プロジェクトマネージャ〔103〕
かなり国際標準に近くなっています。システム・エンジニアに配慮してか、システムアナリストという職種が確立できていないためかはわかりませんが、本来はシステムアナリストとすべきところをシステム設計者としている点はありますが、以前と比較すればかなり進歩しています。
厚生労働省編の職業分類の方も平成23年に改正されています。総務省と微妙に違っていて、ソフトウェア作成者をソフトウェア開発者を呼んでいます。(詳細はハローワークの労働省編職業分類)
職業分類は改正されたものの、ハローワークインターネットサービスの求人をみても、こちらの職種名だと依然としてシステムエンジニア、プログラマーという名前が使われているし、平成24年賃金構造基本統計調査の結果もシステムエンジニア、プログラマーの分類で公表されています。参考までに、平成24年賃金構造基本統計調査の結果をメモしておきます。
システムエンジニア 281,250人 年収5,376,200円
プログラマー 110,450人 年収4,192,600円
なぜ、日本の職業分類がこのように変更されたかというと、国際標準職業分類(ISCO 参考)が2008年に改訂されたためということのようです。参考までにISCO-08での情報処理・通信技術者の分類は以下にメモしておきます。
- 25 Information and communications technology professionals(情報通信技術専門職)
- 251 Software and applications developers and analysts(ソフトウェア・アプリケーション開発者、アナリスト)
- 2511 Systems analysts(システムアナリスト)
- 2512 Software developers(ソフトウェア開発者)
- 2513 Web and multimedia developers(ウェブ・マルチメディア開発者)
- 2514 Applications programmers(アプリケーションプログラマー)
- 2519 Software and applications developers and analysts not elsewhere classified(他に分類されないソフトウェア・アプリケーション開発者、アナリスト)
- 252 Database and network professionals(データベース・ネットワークの専門職)
- 以下略
ISCO-08の前のバージョンである ISCO-88 では、2131 COMPUTER SYSTEMS DESIGNERS AND ANALYSTS 、2132 COMPUTER PROGRAMMERS に分類されていて基本的には日本のシステム・エンジニアとプログラマーの分類と同じです。確かに 1988年当時は、コンピュータのコストが無茶苦茶高い時代でした。設計やプログラミングをコンピューターにアシストさせるということができなかったので、プログラム部分に人を大量に動員する必要があったので、設計とプログラムを分けるのは合理的な方法だったように思います。
ISCO-08 と 日本標準職業分類との違いを見てみると、日本では情報処理プロジェクトマネージャが入っていることです。ISCO-08では管理的職業従事者の 1330Information and communications technology service managers が該当すると思われます。