Webアプリを創る

Umbraco 4.6 BETA が公開されています

2010年12月25日

Umbraco 4.6 (コードネーム Juno) のベータ版が12月24日に公開され、CodePlex のページからダウンロードできるようになっています。Umbraco 4.6 ベータを実際にインストールしてみると、ユーザーエクスペリエンスが大きく改善されていることを実感しました。例えば、下の図のように、スターターキットが用意され、きれいで実用的なスキンがついてくるようなったり、管理画面ではダッシュボードにヘルプやドキュメントへのリンクが表示されるようになりました。Umbraco も開発者のための CMS というだけではなく、WordPress と同じように普通の人にも勧めることができる CMS に成長したんだということを感じています。特にデザイナーの方にはお勧めの CMS になったと思います。Umbraco 4.6 での新しい機能や改善点の主なものは以下のようなものです。

  • インストーラの改善
  • 実用的なスターターキットが用意され、スキンも付属したことにより、初めてのユーザーでもウェブサイト構築の出発点となるサイトを容易に手に入れることができるようになった。
  • スキニングエンジンが導入されて、ユーザーが例えば背景の色や画像の設定の変更を管理画面でおこなうことができるスキンを作成できるようになった。(マニュアル guide to creating Umbraco skins
  • 開発者が Umbraco の拡張を容易にできるようにするため、INode、IMacroEngine 及び ILog のインターフェースが導入された。
  • SQL CE 4.0 のサポート。ベータ版ではマニュアルでライブラリを追加する必要があるが、正式版ではダウンロードのファイルに含まれる予定。小規模なサイトであれば、SQL CE 4.0 を使用すれば、データベースのことを意識する必要がなく、Web PI でワンクリックで自分のPCにインストールして、サイトが完成したら、公開用のサーバーにファイルをアップロードするだけで公開できるようになるので、初心者には優しくなる。
  • Razor のシンタックスをサポート

Umbraco を日本で普及させるための協力のお願い

Umbracoは、世界的には ASP.NET で動作する CMS として最も有名で 85,000以上のサイトで使われているそうですが、日本では、日本語の情報はないし、ユーザー間のコミュニケーションの手段もない状態で、利用しているユーザーはごく少数だと思われます。個人的には、Umbraco には以前からポテンシャルを感じていて、Umbraco の紹介を個人的におこなってきましたが、Umbraco 4.6 は多くに人に勧めることができる CMS になると思っています。この機会に、日本においても Umbraco を多くの人に使ってもらえるようにできればと思っています。

Umbaraco に関する日本語の情報が全くない状態なので、Umbraco に関する情報は何でも、例えば Umbraco をインストールしたよとか、Umbraco でウェブサイトをで作ったよとかいうような情報をコメントしていただけたらと思っています。

また、日本での普及のためには、例えば以下のようなことをすればいいのではないかと考えています。

  • Umbraco の管理画面の日本語化
  • 初心者用の日本語マニュアルの作成
  • ユーザー・フォーラムの運用

日本でのUmbraco の普及に協力していただけるという方や普及をさせるためにはどうしたらいいかという意見がある方がいましたら、是非コメントをいただけたらと思います。

なお、このサイトのコメントの設定は、名前とメールアドレスの入力は必須でなく、承認されたコメントの投稿者以外からのコメントを承認待ちにする設定にしています。

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Yahoo! の Google 検索エンジン採用は独禁法上問題なし – そして移行完了

2010年12月3日

12月2日に公正取引委員会から、Yahoo! Japan が Google から検索エンジン等の技術提供を受けることについての調査結果が公表されています(公表文)。調査結果については、Yahoo! が、検索エンジン等のユーザーとして、Google の検索エンジン等を自社に最適なものとして選択するものであり、技術提供の実施後も、インターネット検索サービス及び検索連動型広告に係る競争は引き続き行われるものであるので、独占禁止法上の問題はないが、本件について引き続き注視し,独占禁止法に違反する疑いのある具体的事実に接した場合には,必要な調査を行うということでメールアドレスを開設しています。

この件については、ASCII の渡辺隆広氏の記事に同感です。日本で Bing を採用するのは現状では性能的に無理で、Yahoo! Japan としてはやむを得ない選択だったと思います。米Yahoo!とGoogleとの連携が独占禁止法に抵触する恐れがあるとして計画を断念したという経緯がありますが、検索エンジンを持っているかどうかの差は大きいでしょう。

この調査結果の公表を待っていたかのように12月2日に Yahoo の Google 検索エンジンへの移行が完了したと思われます。下の図は前々回のブログでも取り上げた Yahoo! の検索エンジンの上位にほとんど登録されていないサイトの検索エンジンのセッション数の推移です。この図から、9月に移行のテストが開始され、11月17日と11月24日に対象が拡大されていることがわかります。また、12月2日にも対象が拡大され、ほぼ Google からのセッション数と同じになったことから移行が完了したものと考えられます。

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日本独自の検索エンジンについて少し調べてみると、MARS FINDER皆声.jpSAGOOL というものがありました。MARS FINDER は企業用のサイト検索エンジンに特化したもので、皆声.jp はブログ検索エンジンで、グルーポン系一括検索等の機能があります。SAGOOLは、チームラボが開発した純国産の検索エンジンでより「おもしろいもの」を探すための検索エンジンです。こうしてみると、多くの検索エンジンが消え去りましたが、Google がカバーできない部分については日本独自の検索エンジンも活躍する余地が残っていると思います。韓国ではNAVERが最大手の検索サービスになっています。日本の検索エンジンにも期待したいと思います。

ASP.NET MVC 3 について

2010年12月1日

Umbraco CMS の次期バージョンである Umbraco 5 (Jupiter) は ASP.NET MVC 3 ベースで作成される予定であり、Orchard CMS も MVC 3 ベースで開発中なので、ASP.NET MVC を勉強しないといけないと思っていたのですが、11月8日に ASP.NET MVC 3 RC が公開されたので、ASP.NET MVC を少し学習しています。

1. マニュアルについて

Microsoft の ASP.NET MVC の日本語のページもかなり充実してきており、ASP.NET MVC チュートリアルMVC Music Store チュートリアルの日本語訳ができていて参考になりました。ただし、MVC Music Store チュートリアルについては、日本語訳は、バージョンが 0.8 がやっと公開されたところですが、英語版では Ver 1.0 が 10月 8日に公開されていて内容も Ver 0.8 よりかなり充実しています。これらは ASP.NET MVC 2 についてのものですが、ASP.NET MVC 3 については、CodeZine 等で以下のとおり Scott Guthrie 氏のブログが翻訳されているので、それをみれば理解することはそれほど難しいことではないと思います。

ASP.NET MVC 2 のプロジェクトから ASP.NET MVC 3 へのアップグレードの方法については、リリースノート(英文)に、msdn には、ASP.NET MVC 3 のドキュメント(英文)があります。

2. MVC 3 の開発環境について

ASP.NET 4.0 及び Visual Studio 2010 が必要です。Visual Studio は、Visual Web Developer 2010 Express でも大丈夫なので、無料で環境を構築することができます。Visual Studio 2010 Professional 以上がないと単体テストの作成ができませんが、MVC を学習するのであれば、Web Developer Express でも特に問題はありません。

3. MVC 3 Razor について

MVC 3 での新機能の目玉の一つは、Razor ビューエンジンです。RC 版では、Visual Studio のインテリセンスの機能も有効になって使いやすくなっています。MVC 3 Razor の機能については、Scott Guthrie 氏のブログでわかりやすく解説されているので理解は容易でした。Razor の売りは、@文字を先頭につけてコード・ブロックを示し、明示的に閉じる必要がなくなったこと、レイアウトの記述の簡略化、@model キーワードの導入により入力が効率化できるということです。どの程度効率化できるかを具体的に比較するため、MVC Music Store チュートリアルのサンプルを Razor に変換してみました。下の図のようになり、文字数が647文字から348文字に減少し、見た目もかなりすっきりしたので、かなり効果があるのがわかります。少し話はそれるのですが、このような機能は、使う側には簡単になのですが、作る側では構文を自動的に解析するという高い技術力が要求されるし、その手間も相当なものだと思うのですが、このようなものを開発してしまう Microsoft の技術力には感心させられました。

MVC Music Store チュートリアル英語版 Page 86

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MVC 3 Razor の場合

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4. パッケージについて

ASP.NET MVC では、jQuery 等の javascript のライブラリは使いやすくなったのですが、一方で ASP.NET Form のコンポーネントの多くが使用できなくなりました。開発作業を効率化するためには、OSS や商用のコンポーネントが広く利用できるのは重要なことです。ASP.NET MVC でも MVC 3 になって、このことがかなり考慮されてきているように感じられました。

まず、MVC 3 をインストールすると NuGet Package Manager が Visual Studio にインストールされるようになりました。Nuget は、プロジェクトにパッケージを簡単にインストールするためのツールで、下の図のように簡単にインストールできるようになります。
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次に、MVC 3 をインストールすると System.Web.Helpers に以下のようなヘルパーが登録され利用できるようになっています。

ヘルパー

概要

Chart

チャートの描画

Crypto

ハッシュアルゴリズムを使ってパスワードの作成

WebGrid

データベースのデータ等の表の描画。ページングと並べ替えをサポート

WebImage

画像の描画

WebMail

電子メールの送信

また、WebMatrix では、Twitter.Search や ReCaptcha 等の機能を持つ Microsoft.Web.Helpers.dll というヘルパーが提供されますが、Visual Studio からもこのアセンブリを参照すれば利用することができます。

例えば、Chart に関していえば、ASP.NET Charting Controls を少し設定をしてやれば(参照)、以前から MVC で利用することができましたが、MVC 3 からは正式に対応するということで、設定無しで Razor に直接記述することもできるし、Controllers に記述することができます。

WebMatrix のチュートリアルにある ASP.NET API Quick Reference にある例では、Razor に記述する場合は、

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Controllers に記述する場合は、以下のように記述して、Razor に <img src="@Url.Content("~/home/GetChart")" /> というように記述してやれば上と同じように表示されます。
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また、Write に代えて Save にすればファイルにグラフのイメージを保存できるし、SaveToCache にすればキャッシュにイメージを保存することができます。Chart については、Google Chart ToolsJS Chart という選択肢もありますが、Chart にはサーバー側で作成できるという特徴があります。このように、ASP.NET MVC においても、多くのツールが提供されより楽しくプログラミングができるようになることを期待しています。

2010 Open Source Award が発表されています

2010年11月20日

毎年恒例となっている英国の出版社 Packt Publishing 社主催の2010 Open Source Award が発表されています。今年度から、Open Source CMS Award ではなく、Open Source Award に変更になったことから、部門が大きく変更されています。Hall of Fame CMS(殿堂部門)では、WordPress が優勝しており、操作性のよさが評価されたものと思われます。Most Promising Open Source Project(新人部門)では、聞き慣れない名前(新人部門なので当然!)ですが、なかなかおもしろそうなソフトが選ばれています。

Open Source CMS(CMS部門)
優勝 CMS Made Simple
1位 SilverStripe
2位 MODx

Hall of Fame CMS(殿堂部門)
優勝 WordPress
1位 Drupal
2位 Joomla!

Most Promising Open Source Project(新人部門)
優勝 Pimcore
1位 TomatoCMS
2位 BuddyPress

Open Source E-Commerce Applications(e-コマース部門)
優勝 PrestaShop
1位 OpenCart
2位 Tomato Cart

Open Source Graphics Software(グラフィック・ソフトウェア部門)
優勝 Blender
1位 GIMP
2位 lnkscape

Open Source JavaScript Libraries(JavaScript ライブラリ部門)
優勝 jQuery
1位 Mootools
1位 Raphaël

Yahoo! の検索エンジンの Google 移行が進行

2010年11月20日

Yahoo! JAPANが検索サービスに Google の検索エンジンを採用すると7月27日に発表(Yahoo のプレスリリース)して、もうすぐ4ヶ月になります。自宅サーバーでこの5月に立ち上げたサイトは、Yahoo の検索エンジン YST では、上位には全くといっていいほど引っかからない状態なのですが、11月17日から Yahoo! からのアクセスが急増しました。このサイトの Google Analytics のトラフィックを見ると、Yahoo の検索エンジンの移行状況が一目でわかっておもしろかったので紹介しておきます。

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図を見ると、8月までは、Yahoo からの接続はほぼ 0 です。9月からテストを開始したということでアクセスが少し発生し、11月17日からアクセス数が急増し対象範囲を広げたのだろうということがよくわかります。Yahoo からのセッション数の google に対する比率は、9月10月の平均では 8.8% ですが 11月17日~19日の3日間では 37% に増加しています。この数字は、Yahoo! の検索エンジンが Google に移行している割合にかなり近いのではなかろうかと思っています。

Yahoo! Japan が検索エンジンに Google を採用することについて、楽天が独占禁止法に違反するとして公正取引委員会に訴えていますが、検索エンジンの精度から見れば Yahoo! Japan としては、やむを得ない選択だったと思っています。そうはいいながらも、日本の企業も独自の検索エンジンを開発してほしいという気持ちはあります。

追伸(11/25)
Yahoo! からのアクセスが 11/24 からまた増加していましたが、本日午後からは、Google とほぼ同程度のアクセスになっています。Yahoo! の検索エンジンの Google への移行がほぼ完了したものと思われます。