Webアプリを創る

国内CMS市場シェアについて

2012年12月6日

前回、国内のCMSのシェアの資料はないと書きましたが、アイ・ティ・アールが出荷金額のシェアを公開していました(ITR Market View:コンテンツ管理市場2012)。それによると、国内WCM(Web content management)市場の2011年度の出荷金額は32億円で前年度比14.3%増の高い伸びを示しているとのことです。会社別のシェアでは、シックス・アパート(MovableType)12.4%、ミックスネットワーク(SITE PUBLIS)11.9%、オートノミー(TeamSite)11.0%、I-ON Comunications(国内販売元:アシスト NOREN)7.9%、パナソニックソリューションテクノロジー(DBPS)5.0% の順となっているそうです。

日本では、まだまだ Movable Type には根強い需要があるようで小差で1位をキープしており、9月には新バージョンの5.2が公開されています。ミックスネットワーク社以下は、1本が数百万円台する商用のCMSです。売り上げの本数で言えば、1社で100本にもならないので、購入しているのは大企業ということになると思います。

この調査は出荷金額の調査なので、OSSのCMSは対象外になってしまいます。前回と合わせると、日本では、商用の数百万するような CMS を導入するだけの金がない会社の場合に、かなりの改造が必要なWebページを作成したいときに、Web会社がかなり無理をして受注してきて WordPress や Movable Type で無理矢理に改造しているという姿が浮かんできます。こういうことも、日本のWeb業界は残業の多い会社が珍しくないという一つの原因になっているのではないでしょうか。

CMS の日本でのシェアは WordPress が一人勝ちになっている件

2012年11月18日

CMS のシェアについて調べてました。W3Techs によると、世界のシェアは、2012年11月現在で WordPress 54.8%、Joomla 8.8%、Drupal 7.1% の順であす。日本のシェアについてのデータは、見あたらなかったので、シェアとしては正確ではないかもしれませんが傾向はわかるので Google トレンドで見てみることにしました。以下が、すべての国と日本の2004年からの人気度の推移です。

すべての国

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日本

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すべての国で見ると、日本と同様にWordPress が一番人気です。Joomla は使いやすさやプラグインの豊富さで過去には一番人気でしたが、WordPress との競争に敗れて現在は人気度を落としています。一方、Drupal については、カスタマイズが容易で大規模なシステムを構築することができることから開発者に人気があり、人気度では WordPress や Joomla ほどは上昇はしませんでしたが、安定した人気があります。

日本をすべての国と比較してみると、XOOPS と Movable Type という過去に人気があった CMS の人気がかなり最近まで続いたこと、現在では、WordPress の一人勝ちで、それ以外に人気のある CMS が存在しないことの二点が大きな特徴になっています。XOOPS や Movable Type はカスタマイズのとても難しい CMS なので、かっては一生懸命カスタマイズに努力していたプログラマーやデザイナーが多数いたはずです。彼(彼女)らは、今どうしているのでしょうか。一部は WordPress に移行したと思うのですが、本来なら一部は大規模なシステムが作れてカスタマイズのしやすい Drupal に移行していてもいいように思うのですが、Drupal は全く人気がない状態です。アメリカ、イギリス、ドイツ等をどの国をみても少なくとも10ぐらいの人気度はあるのですが日本だけは2なのです。

CMS の数はやたらに多いのですべては試していませんが、日本で人気度2位のCMSは、どうやら Jimdo のようです。確かに、Web サイトには記事を WordPress のように時系列で管理するのではなく、Jimdo のように構造的に管理した方がいいものがあります。また、日本のパートナーが KDDI Web Communications なので日本語のサポートがしっかりしているという面もあるでしょう。あと、CMS ではありませんがホームページビルダーも依然としてそれなりの人気があります。

しかし、Jimdo もホームページビルダーも簡易に Web ページを作りたいという人向けの CMS です。W3Techs では、下の図のように市場での位置というデータも公表していますが、Drupal は、比較的規模の大きなサイトで使われています。世界での Drupal の市場位置には当然日本でも需要があるはずだと思うので、日本ではどうしているのだろうかという疑問がわきます。日本の企業はIE6 を使い続けているところが多いので、CMS も昔のものを使い続けているということが考えられます。他には、商用の CMS を使っているとか、無理矢理 WordPress を使っているとかいうことが考えられます。

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それでは、Drupal 又はそれに代わる構造型でカスタマイズが容易な CMS が、日本で一定のシェアを取れるかどうかですが、そもそも日本人は人の真似をすることが多いので、特定のものにシェアが偏りやすい傾向があるのですが、その上に日本語の壁があり日本語の情報がある程度はないといけないという厳しさがあります。

Umbraco も、Drupal の代用になるカスタマイズが容易で大規模なサイトを構築できる CMS です。それでは、Umbraco が日本で離陸できるかといわれると相当困難だといわざるを得ないと思います。WordPress のように日本語で簡単に情報が得られる状態にするのは不可能に近いと思っています。ただ、Umbraco や Drupal のようなタイプの CMS が殆ど使われていない現状もかなり異常な状態であると思っています。それに、Umbraco は、使ってみて気に入っている CMS なので、これからも可能な範囲で長期的にサポートしていこうと思っています。

タイトルを「Webサービス作成日記」に変更しました

2012年11月10日

このブログを、「Windows 7 / Vista で Web サイトを構築」というタイトルで技術的なことを中心に書いてきて、もう4年になりました。その間に、Web の世界は大きく変わったと思います。AWS や Azure のクラウドが普及して、簡単にネットサービスを始めることができるようになったし、自分の方でも Web サイトの構築ではいろいろと経験を積むことができたし、興味の中心もWebの技術を学びたいということから、自分でネットサービスを開発・運営したいということに変わってきました。そこで、Windows 8 も発売されたので、この機会にタイトルを「Webサービス作成日記」に変更してみました。

最近は書くネタが少なくなって、ブログや本体の方の更新も少なくなってきました。そこで、少し方向を変更して、Webを開発・運営するためのノウハウについても書くことにしようと思っています。当面は、作りたいと思っていたけど放置していた Web サイトを Umbraco で作る経過をネタにしようかなと思っています。Umbraco は、自分が作りたいと思っている手書きの記事とプログラムで作成する記事とが入り交じるようなサイトにはぴったりな CMS です。自分でも Web サービスを作ろうと思う背景には、クラウドと Umbraco の存在が大きく、クラウドを使えば手間をかけずにハードウェアを準備できます。ただ、参入しやすくなった分 Web サービスの競争が激しくなっているかなと思います。

起業するにあたって、まず、大切なのはビジョンだといわれています。自分の場合、メリットはプログラムができることと数学が得意なこと、デメリットは面白いことが考えられないことだと思っているので、面白くなくても使ってくれるものを地道に作っていくことかなと思っています。あまり面白くはないんだけど作ってみたいサービスは結構思いついているので、最初の目標は、単純に役に立つWeb サービスを作ることにしようと思っています。ただし、最終目標は面白いWebサービスをつくるということにしよう。

Umbraco 4.10.0 が公開されました

2012年11月9日

Umbraco 4.10.0 がついに公開されました。Umbraco 4.10 では ASP.NET MVC テクノロジーが導入され、WebForms と MVC のハイブリッドになりました。そのため、従来からの XSLT やユーザーコントロールがそのまま継続して利用でき、軽快な動作はそのままで、その上に、ASP.NET MVC の機能も利用できるという素晴らしいCMSになりました。

ASP.NET MVC の機能のうち、4.10.0 でインプリメントされなかった機能は、以下の機能で 4.11.0 で利用できるようになります。

  • 部分ビュー(Partial View)マクロ
  • 子アクション(Child Action)マクロ
  • プレビュー機能

ASP.NET MVC の機能についてのマニュアルは、Our Umbraco の ドキュメントの Working with MVC in Umbraco にありますが、それに対応する日本語版を Umbraco MVC について に作成しました。一部作成中のページもありますが、ほぼ網羅しています。わかりにくい点がありましたら、気軽に修正していただけたらと思います。

Umbraco のロードマップを見ると、6.0.0で追加される予定の New Public API は、既に完了済みになっているので、今後は、スムーズにバージョンアップができていくと思われます。現在のコアチームのメンバーは Shannon を筆頭に本当に優秀で、将来が期待ができると思っています。ダブルバイト文字のURLが使えないという問題も Stéphane がすぐに修正してくれました。

Umbraco 4.10 で MVC を始めよう

2012年10月30日

Umbraco 4.10.0 Beta が公開されています。4.10 の新機能のメインは、MVCがサポートされることです。Umbraco 4.9 までは、小規模な機能拡張であれば、Razor を使ってテンプレートにコードを書くことでスマートに機能拡張を行うことができました。しかし、本格的に機能拡張しようと思えば、UserControl を利用する必要がありました。Umbraco 自体が ASP.NET MVC とよく似た機能を実現させていて、なぜ Umbraco を使うのかという問いに対して、Html + CSS + Javascript でサイトを自由にデザインできるからだと答える人は非常に多いと思われます。それなのに、Html 、CSS 、Javascript が使いづらいユーザーコントロールでしか機能拡張ができないというのは非常に残念なことでした。

4.10 では、MVC がサポートされたことにより Razor をテンプレートの中で自由に利用できるようになり、Patial Views も利用することもできます。MVC とのハイブリッド・アプリケーションにした場合には、@Html.Action、@Html.RendarAction を利用することができるようになったので、Umbraco の Razor から MVC 側のアクションを呼び出し、その結果を ビューに描画することも簡単にできるようになりました。なお、@Html.Action、@Html.RendarAction を使用するためには MVC 側のルーティングを設定しておく必要があります。設定については Umbraco 4 MVC でのルーティングの追加 にメモしています。

このようなことから、Umbraco では、Razor や ASP.NET MVC についての経験があれば容易に機能拡張をすることができます。また、Razor や ASP.NET MVC が初めての場合であっても、Razor や ASP.NET MVC を学ぶということは 広くソフトウェア開発で利用できる技術を学ぶということです。他の CMS のように、機能拡張をするためには、その CMS の独自部分をいろいろと学ばなければいけないというのと比較すれば、はるかに将来のために効率的な開発作業になります。WordPress 等の CMS の機能に満足していない場合には、ぜひ Umbraco を試してみてください。Umbraco のインストール・設定等については、Wiki の Umbraco MVC について をご覧ください。